中国、韓国、そして日本。個性派アーティスト4組が集まる一大音楽フェスタ「ARTLAND ASIA2008」が、いよいよ9月7日に開催される。中国では珍しい、複数の国のアーティストによるライブを前に、羽泉、そしてEGO-WRAPPIN’ 2組に、現在の心境を聞いた。
誰でも自由に楽しめる時代音楽にボーダーなんかない
陳羽凡と胡海泉によるユニット、羽泉。1999年に彗星のごとく現れたデュオは、今回、大陸の音楽シーンを代表するアーティストとして舞台に立つ。今回のフェスタに欠かすことのできない2人の存在。国を超えた祭典開催の裏に、ある日本人アーティストとの交流があった。
海泉:話は3年前になるんですけど、上海で工藤健司さんに偶然お会いして、コラボレーションなんかをさせてもらう機会に恵まれたんですよ。僕たちのコンサートにも、工藤さんが特別ゲストで参加してくれたこともあったんです。工藤さんはJ-POPの有名なプロデューサーですけど、工藤さん自身が欧米の音楽と深く関わるうちに、アジアのアーティストたちと深い交流がしたいと思ったそうなんです。そんなコンセプトが根底にあって、僕たちも参加させてもらうことになりました。日本のファンのみんなの前で歌うのもすごく楽しみです。
デビューして10年。何曲もの大ヒットソングを送り出してきた2人には、今の音楽シーンはどう映るのだろうか。
海泉:一言で説明するのは難しいなぁ。昔はインターネットなんてなかったでしょ? みんなテープやCDでしか音楽を聴けなかった。今はダウンロードで簡単に楽曲だって手に入るし、普通の人が歌った曲をネット上で発表することもできるようになった。一般の人がオーディションに参加してデビューするのも多いしね。だから、単純に比較することは出来ないけど、音楽の垣根がすごく低くなって、誰でも自由に音楽の世界が楽しめる時代になったんじゃないかな。もう音楽には、ボーダーなんかない時代ですよ。
新曲からは遠ざかっている2人だが、今回のライブではどんなサプライズが飛び出すのだろう。今から2人の舞台が楽しみだ。
羽凡:最近は自分のスタジオで新人歌手を育てたり、ライブとかで2人ともけっこう忙しくって…。子どもも生まれたしね。いや~、でも妻の母がすごく素晴らしい人で(笑)、きちんと子どもの世話をしてくれるから僕も仕事に集中できるんです。実は10月11日にも自分のライブを開く予定で、年末にはさらにニューアルバムでみなさんと再会できると思います。今回のライブでは皆さんの思い出になるような曲を聴いてもらいたいと思いますよ。期待してください!!
●羽泉(ゆーちゅえん)
北京出身の陳羽凡、瀋陽出身の胡海泉によって結成されたデュオ。1999年アルバム『最美』でデビュー。ハスキーな羽凡の声と、本格派の海泉のコンビネーションが絶妙で、『冷酷到底』、『虹彩』などヒット作を連発。これまでに7枚のアルバムを発表、ダウンロードが主流の中国市場で累計500万以上のCDセールスを誇るなど、大陸を代表するデュオとして、人気を不動のものとした。
肉体じゃなく、目に見えないところで音楽を作っていきたい
96年の結成以降、昭和歌謡とJazz、Funkなどの音楽を取り入れた絶対的な音楽を武器に、シーンに衝撃を与えてきた森雅樹と中納良恵の2人によるデュオ、EGO-WRAPPIN‘。フジロックフェスティバルや、数々の野外フェスタで強烈な個性と音楽性を披露している彼らにとって、ライブとは、いったいどんな場所なのか。
森:国内のライブよりも、海外のほうがのびのびできる感じ、ありますよね。ヨーロッパでも別に緊張って言うのはなくって、みんなの前で『どうや!』っと行ける感じがします。確かに言葉の問題もあるけど、上海のライブでは日本にこんな音楽があるってことを知ってもらえたらいいですね。
中納:ジャンルに囚われない音楽。私たちがやりたい音楽はそれなんですけど、ライブは私たちそのまんまって感じで、そこでみんなといっしょになれる、お客さんとのコミュニケーションできる場所ですよね。
森:たとえば、お客さんの中ですごくおとなしくて、そんなに激しく乗る感じじゃないのに、僕たちの歌を聴いて「ちょっと前行ってくるわ」みたいな感じでどんどん前に出てきて一緒に楽しんでくれる人を目にすると、最高に楽しいし、ほんとうれしいよね。
中納:そうそう。歌ってる時は、最高に楽しくって、あぁ生きててよかったって。音楽やっててよかったなぁって思いますよ。
日本の人気アーティストなど、中国で今知られてる日本の歌手とはあらゆる点で違う彼らの音楽。オリジナリティと感性が溢れる彼らの音楽は、いったいどこに向かうのか。
森:例えばロックっていう音楽はどうだとか、そういうジャンルの前提があって音楽を語るのって辛いじゃないですか。だから、僕たちは、音楽のフォーマットを提案するんじゃなく、自分たちの新鮮さを提案したいと思ってるんです。だから、ライブでは、ほんと心から楽しむ。それだけですね。
中納:CDジャケットの絵を描いてもらっている美術家の大竹伸朗さんの言葉なんですけどね、人間には肉体と精神がある。人間は肉体で世界と付き合っていくんだけど、物を創るときには魂で作らないといけない。そうじゃないと永遠に残るものは作れないって、その言葉がすごく好きなんです。ビジネスをしようとすると、肉体で世界と付き合うことになってしまうと思うんです。だから、肉体じゃない、目に見えないところで音楽を作っていきたい。そんな歌手でありたいと思います。
魂で歌うのは羽泉も、EGO- WRAPPIN’も同じだ。だから、肉体や言葉を超えて、聴く人の魂に伝わるのだ。9月7日、今まで体験したことのないようなケミストリーを私たちの前で見せてくれるはずだ。
●EGO-WRAPPIN’(えご らっぴん)
大阪出身の中納良恵、森雅樹2人によって1996年に結成されたバンド。Jazz、Soul、昭和歌謡などの要素が複雑に絡み合う独特のサウンドがデビュー当時から話題になり、『色彩のブルース』がロングヒット。その後『くちばしにチェリー』がTVドラマ「私立探偵 濱マイク」のテーマソングとなり、メジャーシーンへと躍り出たが、彼らの音楽は商業的ではなく、常に独自のスタイルを追い求めている。
(SUPER CiTY上海 2008年08月号掲載内容)