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キダム

雪池胡同



文・林静 写真・張全


 月紹介した、氷を貯蔵するための穴倉「冰窖」。清朝の頃、北京には北の宮廷用と南の民用を含め、こういった「冰窖」が18もあり、すべて官営であった。そのうち、現在唯一ちゃんと形を残しているのがこの雪池胡同の冰窖だ。「雪池」とは冰窖の雅称。この胡同にはかつて北海公園管理処が管轄する6つの冰窖があり、冬に北海から切り出した氷を保存していた。そのうちの2つが現在も原型を留めている。

 普段は一般への公開はされていないが、門番の人に頼んで深い方の冰窖に入れてもらった。高さ8メートル、幅10メートル、奥行き30メートルほどのがらんとした空間が広がる。かなり暑い日だったが、中は氷もないのに実にひんやり。まさしく巨大なクーラー・ボックスだ。この冰窖は冷蔵庫が普及する1979年頃まで、電動化された氷の運搬装置と共に実際に使われていたらしい。 床に巨大な石が使われた堅固な作りは、修復を経たばかりとあって、今でも十分使えそうな様子だ。

 明代永楽年間に作られたこの冰窖は、民国初期までの400年もの間、宮廷専用の冰窖だった。辛亥革命で清朝が終わりを告げた後も、1917年まで紫禁城に住み続けた溥儀のために氷を供給した。

 紫禁城内にも5つの冰窖があったが、冷蔵庫のない昔、夏まっさかりに冰窖を思う存分活用することは、皇室だけに許される贅沢だった。美食家として知られる西太后は、夏になると氷で冷やされたメロンに蓮根をあしらった、爽やかなデザートを楽しみ、北海公園を遊覧の際は、冰窖のそばで涼をとったといわれる。

 冬の寒さを賢く利用し、フロンガスも出さないエコロジーな冰窖。もっとも、温暖化の影響で、近年は北京の川や湖に張る氷もどんどん薄くなっている。その意味でも、冰窖は過去の遺物になってしまったといえるのかもしれない。




(SUPER CiTY北京 2007年8月号掲載内容)
 

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