5分で読む日中の動き 2007年8月号
労働者保護強化策中国「労働契約法」の衝撃
「どのくらいのコストアップにつながるかは見当がつかないが、確実に労務管理の時間と手間がかかるようになる」
上海に生産拠点を置く日系企業の幹部は来年1月からの施行が決まった労働契約法の影響に身構える。
労働契約法は、労働者の解雇制限や労働条件の悪化を防ぐなどを目的にした法律。6月29日に全国人民代表大会(全人代)で可決、来年1月1日からの施行が決まった。
具体的には、勤続10年以上の労働者および2回連続で期限付き雇用契約を結び、さらに再契約をする労働者は、「終身雇用」形態に切り替えなければならなくなる。また、労働条件などに関する重要事項を変更する場合は、労働組合、または従業員代表と協議しなければならないなど、労働者保護が強まる。
中国が労働者保護強化に動く背景には、低賃金労働、賃金未払いの横行、福利厚生の不整備に加えて、生産現場での人身事故多発といった社会問題がある。
好調な輸出や国内インフラ整備などが牽引し、年率10%近い高成長を続ける中国だが、その恩恵を受けているのは、法人や一部の企業幹部にとどまると指摘されている。外需に支えられた高度成長から国民消費を含めた内需による高度成長に移行するには、労働者の待遇改善が不可欠と判断した模様だ。労働者の購買力を上げ、胡錦濤政権の最大の経済問題である「投資・輸出への過度の依存からの脱却」、「和諧社会(調和の取れた社会)への転換」を進める狙いである。
しかし、企業はその対応に追われる。冒頭の日系メーカー幹部のように、どの程度の影響が出るかは、各社とも読み切れていない。「日本の本社に具体的な対応マニュアルを要請した」(日系メーカー)という会社もある。
中国では、労働契約を結ばずに就業している労働者が少なくない。特に地方からの出稼ぎ労働者にそれは多く、仕事量に応じて、1カ月単位で雇用し、生産量を調整してきたメーカーにとっては、大きな足かせとなる可能性が高い。
労働契約法が可決する1年ほど前から、地方政府が通達ベースで、労働条件の改善を指示してきたが、思うような効果が上げられずにいた。低コストで高品質な商品を作る「世界の工場」は、労務管理で新たな局面を迎えた。●
水産・魚食大国に向かう中国の虚虚実実
「中国人観光客は他の国の観光客よりも寿司を食べる。食べ方も贅沢だ」
東京・築地魚市場内にある寿司店のオーナーは語る。
築地魚市場で早朝に行われるセリを見学→セリ落とした中卸店を見て回り→場内にある寿司店でお寿司を食べるという観光コースは、いまや中国人をはじめとするアジアや欧米観光客の間ですっかり浸透している。
背景にあるのは、世界的な魚食への関心の高まりだ。
「水産白書(2006年度)」で、日本の「魚離れ」が指摘されるのとは対照的に、世界では魚食ブームが起きている。1人あたりの消費量では、年間約65キロも食べる日本が世界1位だが、2位韓国が60キロで肉薄してきている。中国に至っては、1980年代前半まで1人あたり年間消費量が5キロだった水産物消費量が、5倍以上の27キロにまで急増した。
世界的な魚食ブームにはさまざまな要因が指摘されているが、その1つは家畜の間でBSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザなどの病気の発生だろう。牛肉や鶏肉のリスクが高まったために、より安全な食品として魚を選択する人々が増えたということだ。さらに肥満や生活習慣病の予防のために、「健康食」として求めるようになった。
需要が急拡大するなか、供給はどうか。結論を急ぐと、ほぼ天井を打っている。
04年国連食糧農業統計機関(FAO)の調査によれば、養殖を含む漁業生産量は、1位は中国、2位はペルー、3位インドネシア、以下インド、チリと続き、日本は6位にとどまる。
世界全体で年間約1億5000万トンの漁業生産だが、その3分の1以上の5800万トンを占めるのが、実は中国である。1970年代以降、世界の漁業生産量を押し上げてきたのも中国である。
しかし、この中国の数字に専門家は疑問を持つ。まず、世界の3分の1の量を物理的に生産するだけの漁船や養殖場などのインフラがあるのかどうか、だ。いくら広い領土と13億人の人口を誇る中国でもこの数字は大き過ぎると、見られている。
いずれにしても、需給の両面で魚食への影響は中国抜きには語れなくなっているようだ。●
「どのくらいのコストアップにつながるかは見当がつかないが、確実に労務管理の時間と手間がかかるようになる」
上海に生産拠点を置く日系企業の幹部は来年1月からの施行が決まった労働契約法の影響に身構える。
労働契約法は、労働者の解雇制限や労働条件の悪化を防ぐなどを目的にした法律。6月29日に全国人民代表大会(全人代)で可決、来年1月1日からの施行が決まった。
具体的には、勤続10年以上の労働者および2回連続で期限付き雇用契約を結び、さらに再契約をする労働者は、「終身雇用」形態に切り替えなければならなくなる。また、労働条件などに関する重要事項を変更する場合は、労働組合、または従業員代表と協議しなければならないなど、労働者保護が強まる。
中国が労働者保護強化に動く背景には、低賃金労働、賃金未払いの横行、福利厚生の不整備に加えて、生産現場での人身事故多発といった社会問題がある。
好調な輸出や国内インフラ整備などが牽引し、年率10%近い高成長を続ける中国だが、その恩恵を受けているのは、法人や一部の企業幹部にとどまると指摘されている。外需に支えられた高度成長から国民消費を含めた内需による高度成長に移行するには、労働者の待遇改善が不可欠と判断した模様だ。労働者の購買力を上げ、胡錦濤政権の最大の経済問題である「投資・輸出への過度の依存からの脱却」、「和諧社会(調和の取れた社会)への転換」を進める狙いである。
しかし、企業はその対応に追われる。冒頭の日系メーカー幹部のように、どの程度の影響が出るかは、各社とも読み切れていない。「日本の本社に具体的な対応マニュアルを要請した」(日系メーカー)という会社もある。
中国では、労働契約を結ばずに就業している労働者が少なくない。特に地方からの出稼ぎ労働者にそれは多く、仕事量に応じて、1カ月単位で雇用し、生産量を調整してきたメーカーにとっては、大きな足かせとなる可能性が高い。
労働契約法が可決する1年ほど前から、地方政府が通達ベースで、労働条件の改善を指示してきたが、思うような効果が上げられずにいた。低コストで高品質な商品を作る「世界の工場」は、労務管理で新たな局面を迎えた。●
水産・魚食大国に向かう中国の虚虚実実
「中国人観光客は他の国の観光客よりも寿司を食べる。食べ方も贅沢だ」
東京・築地魚市場内にある寿司店のオーナーは語る。
築地魚市場で早朝に行われるセリを見学→セリ落とした中卸店を見て回り→場内にある寿司店でお寿司を食べるという観光コースは、いまや中国人をはじめとするアジアや欧米観光客の間ですっかり浸透している。
背景にあるのは、世界的な魚食への関心の高まりだ。
「水産白書(2006年度)」で、日本の「魚離れ」が指摘されるのとは対照的に、世界では魚食ブームが起きている。1人あたりの消費量では、年間約65キロも食べる日本が世界1位だが、2位韓国が60キロで肉薄してきている。中国に至っては、1980年代前半まで1人あたり年間消費量が5キロだった水産物消費量が、5倍以上の27キロにまで急増した。
世界的な魚食ブームにはさまざまな要因が指摘されているが、その1つは家畜の間でBSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザなどの病気の発生だろう。牛肉や鶏肉のリスクが高まったために、より安全な食品として魚を選択する人々が増えたということだ。さらに肥満や生活習慣病の予防のために、「健康食」として求めるようになった。
需要が急拡大するなか、供給はどうか。結論を急ぐと、ほぼ天井を打っている。
04年国連食糧農業統計機関(FAO)の調査によれば、養殖を含む漁業生産量は、1位は中国、2位はペルー、3位インドネシア、以下インド、チリと続き、日本は6位にとどまる。
世界全体で年間約1億5000万トンの漁業生産だが、その3分の1以上の5800万トンを占めるのが、実は中国である。1970年代以降、世界の漁業生産量を押し上げてきたのも中国である。
しかし、この中国の数字に専門家は疑問を持つ。まず、世界の3分の1の量を物理的に生産するだけの漁船や養殖場などのインフラがあるのかどうか、だ。いくら広い領土と13億人の人口を誇る中国でもこの数字は大き過ぎると、見られている。
いずれにしても、需給の両面で魚食への影響は中国抜きには語れなくなっているようだ。●
(CHiNA ビジネス 2007.8月掲載内容)


