TOP INTERVIEW 美世咨詢(上海)有限公司 日系企業支援中国統括 顧暁葎
人材を最大限に活かすリーダーシップこそが組織の価値を高める
ますます熾烈化する中国市場で勝ち残るためには、組織のリーダーとして総経理自身がいかに人への関心を高め、人を最大限に生かす方向へ舵を取っていけるかにかかっている――。組織・人事マネジメントコンサルティング会社として質、量ともに世界ナンバー1を誇るマーサーの、中国組織が戦略を再構築する際のサポート活動が日系企業から注目されている。

“ACT”する人材ではなく“THINK”できる人材を育てることが大切です
顧暁葎
JACK GU
中国上海市生まれ。上海の大学を卒業後、中国国営企業にてエンジニアとして勤務。日本へ渡航し、法政大学大学院修士課程修了。日本にて大手電機メーカー勤務。中国に帰国後、大手欧米電機メーカー、日系コンサルティング会社を経て、現職。
――今も日系企業にとって人材問題は最大の課題です。優秀な中国人人材が次々と欧米系企業に引き抜かれてしまい、常に人材不足に悩む総経理は少なくありません。中国人ホワイトカラーにとっては、やはり日系企業よりはるかに高い欧米系企業の報酬が最大の魅力なのでしょうか?
顧 確かに欧米系企業は、マネジャークラス以上だと日系企業より報酬水準が高いという現実があります。しかし、実際に中国人ホワイトカラーたちの声を聞いて見ると、必ずしも報酬面だけでなく、日系企業の人事制度そのものへの不満から離れていくケースが多いです。弊社は日本語も話せる経験豊富な中国人コンサルタントを多く抱え、組織見直しの原点となる現場の声もよく聞いてコンサルティングすることが特徴です。実際に現場の声を総合してみると、実力のある中国人に仕事の役割と職務の権限を与える、といった組織の中で上手に活かされなかったことが、中国人を失望させる要因となっています。比較的成功している欧米系企業では、中国人との信頼関係をしっかりと築き、その能力に応じて大きな仕事をする機会を与えています。さらにその機会を活かして実績を積み重ねた人間には社内でキャリアアップできる明確な道を示すこともしています。責任とともに将来への夢を与えている、といってもいいと思います。だから、当然といえば当然なのですが、欧米系企業が報酬水準が高いのは、日系企業と同じ役職であっても、その権限と役割においては大きな違いがあるからです。
たとえば、日系企業の人事課長と言われるポジションでは、賃金計算など事務作業の管理監督、労務関連法規に関する情報収集といった事務的な仕事が中心です。一方、欧米企業では「HR(ヒューマンリソース)マネジャー」と呼ばれ、事業の特色を踏まえた人事制度を考案し、各部門長に自ら提案するような役割も期待されています。
――キャリアアップ志向の強い中国人には、仕事の役割と責任が与えられ、自分自身を高められると実感できることが大きな魅力ですね。日系企業の総経理の皆さんも、中国人に役割や権限を与えることの必要性には気づいているようです。
顧 そうですね。権限を委譲することが組織発展の契機であると考え、相談に来られる経営層の方は依然多いです。これまで日系企業が欧米系企業に比べて、思い切った権限委譲に踏み切れなかったのは、ものづくりで世界の頂点に上り詰め、自信を深めてきた過去の成功体験が、かえって中国では邪魔になっている面があると思います。
私自身はもともと日本の大学院でも熱工学を専攻した技術者でした。卒業後、日本の大手電機メーカーで商品開発に携わりましたが、企画自体の原因で6つのモデルがどれも商品化できなかった失敗があります。この時の貴重な経験が、いずれ方向転換をしてコンサルタントへの道を歩むきっかけともなったのですが、まずは企業や人々が何を必要としているのかといった市場の要求を基に組織としての販売戦略を考え、商品開発を行っていく大切さを学ぶことができました。ただ単に「いいものをつくればいいんだ」と、技術開発に盲目的になっても意味がないと気づいたのは大きかったです。
今や中国の日系企業の生産現場でも情況は似たところがあります。これまでは日本と同じ高品質のものを作るため、「言われたことをキチンとこなす」、つまり“ACT”する中国人人材だけで十分でした。しかし、今や中国は生産現場から市場となり、商品開発からマーケティング、販売などさまざまな面で「中国発」が欠かせなくなっています。中国人スタッフにも、自らものごとを考え、新しいものを創造していける、つまり“THINK”できる人材が必要となっているんです。そうした時代の変化を敏感に感じ取り、組織の人材という経営資源への関心を持ちえた総経理自らが、人材マネジメント改革に向け強いリーダーシップを発揮していけるかが、組織が勝ち残れるかどうかの大きな分かれ道になっています。
当然ですが、業種や会社によって、どこまで権限委譲をしていったらいいのかは、それぞれの組織の中国での大きな戦略の中で考えていく必要があります。
――そこで組織・人事マネジメントコンサルティングとして豊富な経験を持つプロフェッショナルとしてのマーサーの視点が中国でも活きてくる訳ですね。
顧 マーサーはカナダで1945年に誕生し、すでに60余年の歴史を持つ世界最大級の組織・人事マネジメントコンサルティング会社です。海外に展開する日系企業への支援業務を90年代半ばから開始し、中国では2001年から常駐の日本人を置き、日系企業のお手伝いをさせていただいてきました。日本語を話せる熟練した中国人コンサルタントと日本人コンサルタントがタッグを組み、クライアントとまさしく膝を付き合わせるようにして取り組んでいます。
日本本社の考えを理解した日本人コンサルタントと現場の実情をよく知った優秀な中国人コンサルタントたちが総出で対応できることが最大の強みです。日系企業支援グループのコンサルタントは、基本的に日本語・中国語・英語の3カ国語での対応が可能です。人材マネジメントに関する突っ込んだディスカッションが、多言語で同時に行えることも、マーサーにご依頼いただく理由のひとつとなっています。
――しかし、いくら専門家から強く言われてみても、時代の変化に気づき、勝ち残るために自ら組織の方向を変えていくことはなかなかできることではないかもしれません。まずできるところからですが、日系企業の目下の課題と考えられていることは何でしょうか。
顧 “THINK”する中国人人材が求められる中、近年になって顕在化しているのが、私たちが「ジュニア・マネジメント」と呼んでいる日本人の若手中間管理層のマネジメントスキルの問題です。日本人のジュニア・マネジメントと優秀な中国人部下との乖離が水面化で進んでいて、それが優秀な中国人のモチベーション低下や流出に影響している現状があります。
日本では「失われた10年」といわれる通り、90年代から長く続いた不況により、大企業であっても人材の採用と育成が後回しにされてきたため、今になってマネジメント経験のある人材が不足し、20代後半~30代のマネジメント経験のない人材が現地法人に管理者として派遣されてくることが多くなりました。それとは対照的に、グローバル感覚を身に付けた優秀な中国人が人材市場に育ちつつあります。彼らはキャリアアップに対し、非常に貪欲です。この上司は自分にないどんなスキルを持っているのか、この上司と一緒に働くことで何が学べるか、ということを常に意識しています。
“ACT”ではなく“THINK”できる中国人を育てるには、まず中国人と直接接している日本人のジュニア・マネジメントの強化が課題ではないでしょうか。マーサーでも、人材マネジメントの仕組みづくりとともに、仕組みを動かすための人材育成プログラムにおいて、日本人ジュニア・マネジメント育成の支援を行っています。●
美世咨詢(上海)有限公司(MERCER)
住所:上海市淮海中路300号香港新世界大厦36楼
電話:(021)6103-5425 FAX:(021)6361-6533
http://www.mercerHR.com.cn
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日系企業支援中国統括 顧暁葎
ますます熾烈化する中国市場で勝ち残るためには、組織のリーダーとして総経理自身がいかに人への関心を高め、人を最大限に生かす方向へ舵を取っていけるかにかかっている――。組織・人事マネジメントコンサルティング会社として質、量ともに世界ナンバー1を誇るマーサーの、中国組織が戦略を再構築する際のサポート活動が日系企業から注目されている。

“ACT”する人材ではなく“THINK”できる人材を育てることが大切です
顧暁葎
JACK GU
中国上海市生まれ。上海の大学を卒業後、中国国営企業にてエンジニアとして勤務。日本へ渡航し、法政大学大学院修士課程修了。日本にて大手電機メーカー勤務。中国に帰国後、大手欧米電機メーカー、日系コンサルティング会社を経て、現職。
――今も日系企業にとって人材問題は最大の課題です。優秀な中国人人材が次々と欧米系企業に引き抜かれてしまい、常に人材不足に悩む総経理は少なくありません。中国人ホワイトカラーにとっては、やはり日系企業よりはるかに高い欧米系企業の報酬が最大の魅力なのでしょうか?
顧 確かに欧米系企業は、マネジャークラス以上だと日系企業より報酬水準が高いという現実があります。しかし、実際に中国人ホワイトカラーたちの声を聞いて見ると、必ずしも報酬面だけでなく、日系企業の人事制度そのものへの不満から離れていくケースが多いです。弊社は日本語も話せる経験豊富な中国人コンサルタントを多く抱え、組織見直しの原点となる現場の声もよく聞いてコンサルティングすることが特徴です。実際に現場の声を総合してみると、実力のある中国人に仕事の役割と職務の権限を与える、といった組織の中で上手に活かされなかったことが、中国人を失望させる要因となっています。比較的成功している欧米系企業では、中国人との信頼関係をしっかりと築き、その能力に応じて大きな仕事をする機会を与えています。さらにその機会を活かして実績を積み重ねた人間には社内でキャリアアップできる明確な道を示すこともしています。責任とともに将来への夢を与えている、といってもいいと思います。だから、当然といえば当然なのですが、欧米系企業が報酬水準が高いのは、日系企業と同じ役職であっても、その権限と役割においては大きな違いがあるからです。
たとえば、日系企業の人事課長と言われるポジションでは、賃金計算など事務作業の管理監督、労務関連法規に関する情報収集といった事務的な仕事が中心です。一方、欧米企業では「HR(ヒューマンリソース)マネジャー」と呼ばれ、事業の特色を踏まえた人事制度を考案し、各部門長に自ら提案するような役割も期待されています。
――キャリアアップ志向の強い中国人には、仕事の役割と責任が与えられ、自分自身を高められると実感できることが大きな魅力ですね。日系企業の総経理の皆さんも、中国人に役割や権限を与えることの必要性には気づいているようです。
顧 そうですね。権限を委譲することが組織発展の契機であると考え、相談に来られる経営層の方は依然多いです。これまで日系企業が欧米系企業に比べて、思い切った権限委譲に踏み切れなかったのは、ものづくりで世界の頂点に上り詰め、自信を深めてきた過去の成功体験が、かえって中国では邪魔になっている面があると思います。
私自身はもともと日本の大学院でも熱工学を専攻した技術者でした。卒業後、日本の大手電機メーカーで商品開発に携わりましたが、企画自体の原因で6つのモデルがどれも商品化できなかった失敗があります。この時の貴重な経験が、いずれ方向転換をしてコンサルタントへの道を歩むきっかけともなったのですが、まずは企業や人々が何を必要としているのかといった市場の要求を基に組織としての販売戦略を考え、商品開発を行っていく大切さを学ぶことができました。ただ単に「いいものをつくればいいんだ」と、技術開発に盲目的になっても意味がないと気づいたのは大きかったです。
今や中国の日系企業の生産現場でも情況は似たところがあります。これまでは日本と同じ高品質のものを作るため、「言われたことをキチンとこなす」、つまり“ACT”する中国人人材だけで十分でした。しかし、今や中国は生産現場から市場となり、商品開発からマーケティング、販売などさまざまな面で「中国発」が欠かせなくなっています。中国人スタッフにも、自らものごとを考え、新しいものを創造していける、つまり“THINK”できる人材が必要となっているんです。そうした時代の変化を敏感に感じ取り、組織の人材という経営資源への関心を持ちえた総経理自らが、人材マネジメント改革に向け強いリーダーシップを発揮していけるかが、組織が勝ち残れるかどうかの大きな分かれ道になっています。
当然ですが、業種や会社によって、どこまで権限委譲をしていったらいいのかは、それぞれの組織の中国での大きな戦略の中で考えていく必要があります。
――そこで組織・人事マネジメントコンサルティングとして豊富な経験を持つプロフェッショナルとしてのマーサーの視点が中国でも活きてくる訳ですね。
顧 マーサーはカナダで1945年に誕生し、すでに60余年の歴史を持つ世界最大級の組織・人事マネジメントコンサルティング会社です。海外に展開する日系企業への支援業務を90年代半ばから開始し、中国では2001年から常駐の日本人を置き、日系企業のお手伝いをさせていただいてきました。日本語を話せる熟練した中国人コンサルタントと日本人コンサルタントがタッグを組み、クライアントとまさしく膝を付き合わせるようにして取り組んでいます。
日本本社の考えを理解した日本人コンサルタントと現場の実情をよく知った優秀な中国人コンサルタントたちが総出で対応できることが最大の強みです。日系企業支援グループのコンサルタントは、基本的に日本語・中国語・英語の3カ国語での対応が可能です。人材マネジメントに関する突っ込んだディスカッションが、多言語で同時に行えることも、マーサーにご依頼いただく理由のひとつとなっています。
――しかし、いくら専門家から強く言われてみても、時代の変化に気づき、勝ち残るために自ら組織の方向を変えていくことはなかなかできることではないかもしれません。まずできるところからですが、日系企業の目下の課題と考えられていることは何でしょうか。
顧 “THINK”する中国人人材が求められる中、近年になって顕在化しているのが、私たちが「ジュニア・マネジメント」と呼んでいる日本人の若手中間管理層のマネジメントスキルの問題です。日本人のジュニア・マネジメントと優秀な中国人部下との乖離が水面化で進んでいて、それが優秀な中国人のモチベーション低下や流出に影響している現状があります。
日本では「失われた10年」といわれる通り、90年代から長く続いた不況により、大企業であっても人材の採用と育成が後回しにされてきたため、今になってマネジメント経験のある人材が不足し、20代後半~30代のマネジメント経験のない人材が現地法人に管理者として派遣されてくることが多くなりました。それとは対照的に、グローバル感覚を身に付けた優秀な中国人が人材市場に育ちつつあります。彼らはキャリアアップに対し、非常に貪欲です。この上司は自分にないどんなスキルを持っているのか、この上司と一緒に働くことで何が学べるか、ということを常に意識しています。
“ACT”ではなく“THINK”できる中国人を育てるには、まず中国人と直接接している日本人のジュニア・マネジメントの強化が課題ではないでしょうか。マーサーでも、人材マネジメントの仕組みづくりとともに、仕組みを動かすための人材育成プログラムにおいて、日本人ジュニア・マネジメント育成の支援を行っています。●
美世咨詢(上海)有限公司(MERCER)
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(CHiNAビジネス 2007.8月掲載内容)


