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キダム

優秀な中国人を我社へ取り込め! 生き残りのための“人財”戦略 ②

中国人スタッフを活かす仕事の現場から
中国市場の最前線に立つ日本本社採用の中国人


キリンビバレッジ
上海錦江麒麟飲料食品有限公司
住 上海市復興中路1199号 明園世紀城B座301室
Tel 021-5465-7070



(写真)
zhangwei
張威 さん 46歳 董事副総経理


マイナー路線から地域へ販路を拓く

 国市場で日本のブランドを構築する難しさとその克服――その2つの過程を身をもって体験してきたのがキリンビバレッジの現地法人、上海錦江麒麟飲料食品有限公司だ。2001年、日本と同じブランド「午後の紅茶」を上海へ投入し、大流行を呼び起こす。昨年の販売量は約1億本以上と前年比成長率は約30%。年々消費が拡大する「午後の紅茶」の成功によって、「キリン」のブランドイメージは中国の消費者の間に深く浸透しつつある。が、その陰の立役者となって動いてきたのが同社副総経理の中国人、張威さんだ。日本への留学や日系企業への就職を踏み台にして日本本社で採用された中国人が、日系企業の駐在員として中国市場の最前線に立っていることも多くなった。

 上海生まれの46歳。本来は、北京の大学の研究所で8年間もマクロ経済を研究していた、いわゆる経済学者。1980年代後半に日本の政府系の研究機関で日本経済を研究した経験も持つ知日派。それが、香港の日系銀行に勤めたことをきっかけにして95年にキリンビールの東京本社へ入社した。ちょうどキリンが中国への攻勢を始めた頃で、中国市場を知る優秀な中国人を必要としていたのだ。

 翌96年、キリングループでは大陸出身の中国人としては初めて駐在員として中国へ派遣される。上海の大手企業グループ錦江国際(集団)との合弁で同年4月に設立されたばかりの上海錦江麒麟飲料食品有限公司の副総経理に着任した。
 

現地の発案で日本のブランド
「午後の紅茶」を中国へ 

 しかし、基盤を固めようとした90年代後半は苦戦した。まだ消費水準が十分に成熟していなかった中国市場では、キリンブランドを強調せずに、商品の品質と経済性を訴えることに重きを置いてきた。が、反ってそれがローカルとの差別化ができずに苦戦する原因ともなったのだ。

 若者たちがペットボトル飲料などを持ち歩く消費行動も少しずつ拡大しつつある。ならば、「日本で成功したブランドを中国でもそのまま展開すべきではないか」――張さんらが日本本社に提案。01年に上海市場に「午後の紅茶」の発売されると、爆発的な人気を得ていくことになった。

 人気を醸成する下地を形成したのは、苦戦しながらも90年代後半から地道に築いてきた販売チャネルだ。「まず消費者に飲んでもらい、認めてもらうことが必要。本部商談で一括納品を決める大型スーパーなどではなく、若者が多く集まる大学の売店やコンビニエンスストア、新興のハイパーマーケットなどマイナーなルートに直接販路を広げていった。そこで活躍したのが中国人らを中心とする営業部隊でした」と張さんは言う。

 03年以降は「FIRE」「ミルクティー」など新商品を次々と発売すると同時に、上海以外の都市へのブランドイメージの拡大も進めている。他の都市でも行っているのが、問屋契約ではなく、やはり自社の中国人営業部隊が地道にローカルに販売チャネルを開拓する方式だ。「中国市場の最前線には、中国の市場やビジネスに習熟した中国人をどんどん活用し、養成していくことはこれからもっと大切になってくる」と張さんは強調する。





ブラザー工業
兄弟(中国)商業有限公司
住 上海市遵義路100号 虹橋上海城A座23楼
Tel 021-6237-1228

yinbingxin
尹炳新 さん 44歳 董事副総経理(写真)

国籍や民族を越えて誇りを持てる企業へ

 つてはミシンのイメージが強かったブラザー工業株式会社だが、オフィスや家庭でも広汎に使われるプリンター、FAX複合機、電子文具の「P-touch」などに代表される情報機器のメーカーとしても変身を遂げた。92年に深圳を皮切りに中国にも進出し、中国の消費者の中でも着実にそのブランドを確立しつつある。

 05年3月には、中国政府の外資規制の緩和に伴い、中国国内での仕入れ販売権を持つ全額出資の卸売会社・兄弟(中国)商業有限公司を上海市内に設立。さらなる国内での販路拡大に向けて大きく動き出した。同社で副総経理を務めているのが、同社生え抜きの中国人、尹炳新さんだ。

 天津市出身の44歳。前出のキリンビバレッジの張威さんと同じように、会社は違うが日本本社採用組だ。改革開放後の80年代後半から90年代前半に日本へ留学した初期のエリート世代が大手企業の日本本社で採用され、現在は中国の現地法人で中国市場の最前線に立って組織を指揮している例は多い。

 84年に地元の大学を卒業後、日系企業の誘致などをサポートする天津市政府の科学技術委員会に8年間勤めた。その間、政府の国費留学生として1年間日本の大学で学んだ後、92年にブラザー工業株式会社に入社した。

 3年間の名古屋本社勤務を経て、96年から4年間北京の駐在員事務所へ。03年に上海に赴任。ブラザーへの入社から14年、現在は上海からブラザーの情報機器製品の中国国内販売を統括する立場にある。


ディーラーとの信頼が生む販売網の拡大

 「ブラザーといっしょに成長しよう。ディーラー(販売店)さんが大きくならないと、我々ブラザーも大きくなれない」と、いつも各地域のディーラーと会うと訴えかけているという。物理的に広大な中国市場での販路の拡大は、直接消費者や顧客と接するディーラーの存在が要となるのは言うまでもない。

 「そんな彼らといかに信頼関係を結んでいくのかも、地域に密着できる中国人スタッフたちの役割が大きい」と尹さんは言う。他社の製品を扱ってきたディーラーであっても、ブラザーの良さを訴えかける。ディーラーに理解してもらうのは商品だけではない。ブラザーが名古屋で起業した当時から持つ、その企業理念だ。

 「もの創りを通して優れた価値を創造し、迅速に提供すること」——これは同社グループが「グローバル憲章」として掲げている言葉。その中の「優れた価値」とは、単に売上や利益の増加を意味しない。「国境や民族の違いを乗り越えてみんなが互いに尊重し合い、助け合う社会を作り出すことでもある」と尹さん。

 元政府の役人だった人間が日系企業のために働く。「あなたはなぜ日本のために働くのか?」と昔は同胞の中国人から誤解を受けたこともあった。しかし、尹さん自身が、理念を持ったブラザーに心底から惚れ込んできたからこそ、努力し続けてこられた。「これからも製品を利用する顧客のみならず、ディーラーや自社の従業員に対しても、その理念を訴え続けていきたい」と話す。








中国でも誇りが持てる日系企業へ
人財が握る企業の価値

この特集の冒頭で紹介させていただいたOKI日沖科技(上海)有限公司(OSTS)の3人の中国人スタッフたち。楽しそうに仕事をしていたのは彼らだけでない。机から顔を上げてあいさつしてくれるスタッフたち全員の表情が明るい。「私たちはみんなが“ワクワク”できる会社を目指しているんです」と、同社副総経理の松原さんは話す。決して待遇面だけではないだろう。設立から2年半でひとりも離職者がいない理由も、この雰囲気の中にあるのかもしれない。


仕事に面白みを求める中国人たち

 中国人スタッフたちが会社に強く求めるのは「良い上司、同僚」と「仕事の面白み」。意外にもその次に来るのが「お金」や「自己実現(キャリアアップ)」だった。――ある日系企業が今年春、日本人や中国人の一般職員らを対象にアンケートした結果だ。

 この結果を基に、同社ではいままでやっていなかったカラオケやボーリング大会などを開くようにした。「コミュニケーションが増えたことにより、お互いが問題点を事前に把握、注意できるようになったため、伝票ミスなどが少なくなった。日本以上にコミュニケーションは大切。日本式の”ノミニケーション“とは実にマネジメント手法のひとつだと分かった」と日本人スタッフも驚く。中国人スタッフのやる気を上手に引き出し、会社の発展に結び付けている企業も少なくない。


エレベーターのない 高層ビル!?

 中国人から、日系企業は「エレベーターのない高層ビル」と例えられているという。建物は高くて立派だが、上へ昇っていくキャリアアップの道が閉ざされている。いったん建物の中に入ったはいいが、ロビーのところで大勢の人々が右往左往している――そんなイメージなのだろう。

 「日系企業への誤解だと思う。確かに楽に上へ昇れる高速のエレベーターはない。しかし、ゆっくりと自分の足で上がっていく階段はつけてあるはずだ」とジャーナリストの田中信彦さんは反論する。日本では、会社組織の中で人を育ててきた。組織が人を育て、人が組織を育ててきたからこそ、日本が驚異的な経済成長を成し遂げる原動力ともなった。

 エレベーターつきの高層ビルが、即戦力を持つ高級人材を他社から容赦なくヘッドハンティングして現地のトップへと採用してしまう欧米系企業だとすれば、終身雇用に近い長期雇用で社員を守りながら、ゆっくりと組織の中で人づくりをしてきたのが日本の階段つきの高層ビルなのだ。時間はかかるが、人を育てることができる。

 田中さんは「今一度、日本の成功体験に自信を持って欲しい」と強調する。自信を持つのは人を育てる長期雇用だけではない。上記で紹介した、中国人社員のやる気を出した「ノミニケーション」も、日本社会のお家芸のひとつ。組織の一体感を大切にし、社員全員で会社を盛り上げていこうとするのは日本人が一番得意とするところのはずだ。

 現地で採用した優秀な中国人をじっくり経営者として育てていこうとするヤクルトの取り組みも、日本式の経営手法のひとつといってもいいだろう。鴎秀(上海)管理諮詢有限公司(job2me)副総経理の米田豊さんは「これまでの自分たちのやり方に自信を持ち、明確なポリシーを持ってやっている企業は今後も確実に大きく伸びていく勢いがある」と話す。

 中国市場にはいろんな人材がいる。「生産輸出型製造業がブルーカラーを大量に使ってきたように、”安かろう悪かろう“というコスト意識を優先させた人事はもう通用しない時代になっている」と上海修曼人才有限公司(上海ヒューマン)総経理の平松展行さん。「人材問題もすべて管理者の経営の問題にぶち当たる。自分たち(日系企業)の競争力を高めるために、ここ中国で何を実現していくべきなのか? をしっかり考えていく」ことが大切だという。


中国で価値のある日系企業へ

 多くの日系企業が会社の理念として持っているのは、利益の追求だけではない。地味ながら、教育や文化交流、環境保護の面でさまざまな社会貢献活動を展開する企業はどんどん増えている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)上海センター次長の岩田泰さんも訴える。「中国人が魅力を感じられる会社。会社の価値が高まることで、自分の価値をも高められるような存在感のある会社へと変わり、中国社会へ自信を持ってその魅力を発信していければ、絶対に共感できるいい人材が集まってくる。日本の原点に戻って元気を出してやっていってほしい」。そうすれば、中国人を活かし、中国とともに成長できる企業をつくっていくこともできるはずなのだ。●



※内容は『SUPERCITY CHINAビジネス07.7月号』より一部抜粋して掲載しております。全ページをご覧になりたい場合、左上の「電子BOOKを読む」からお入りください。

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