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キダム

2005年02月掲載

「中国で世界チャンプを育てたい」
“2つの顔を持つ男”、キックボクシングジムを設立


がっしりした体つき、ひたと相手を見据えるまなざし。1月、上海に中国初のキックボクシングジムを開いた金暁慶さんは、いかにも武道家といった風貌をたたえている。しかし一方で、その流暢な日本語と行動力を駆使しての映像ジャーナリストとしての顔も持つ。多才ぶりを発揮する金さんが、今回のジムにかける夢とは、中国初の世界チャンプを育てることだ。


 開発ラッシュの仙霞西路と平塘路の交差点付近、真新しい住宅街の並びに赤い看板がかかっている。1月23日にオープンしたジム『上海龍城武道健身中心』。館長は伊原信一氏、副館長は金平桂一郎氏。伊原館長は、門下生に小川直也、魔裟斗、ボブサップなどを抱える格闘技界の重鎮だ。

 金さんは、ここで総経理兼館長代理を務める。中学生の頃からカンフーを始め、武道の世界へ。「きっかけですか?信じられないかもしれないけど、昔いじめられっ子だったんですよ」。文革期、資本家だった父が農村に下放されたことが原因だった。朝4時半に起床、中山公園に通う毎日が続いた。細かった体ががっちりしてくるとともに、「自分に対する自信がついたのが大きかった」と語る。高校は名うての進学校だったが、あえてホテル専門学校へ入学、卒業後は高い競争率をかいくぐり、ヒルトンホテルへ就職。すでに、視線は外国へと注がれていた。

 渡日後、日本語をマスターするまでは、複数のアルバイトと学校との両立。当時の日記によれば、3日間72時間のうち、ほんの6時間しか睡眠をとらない状況もあった。また、日本語を習得した後、専門学校と大学で映像、放送関係を学ぶ。

 武術に親しんできた金さんが日本でキックボクシングを始めたのは自然の成り行きだった。伊原ジムに通い、ヘビー級のプロライセンスを取得する。この伊原会長との出会い、共通の熱き想いが、上海にキックボクシングジムを開かせることになる。

 「日本の武道と中国の武道の融合です」。伊原館長の、決してもうけ主義に偏らない思想に共感したという。「中国からボクシングのオリンピックチャンピオンを、キックボクシングの世界チャンピオンを出したい。さらに日中交流、国際交流につなげてゆきたい。このジムには実績もコネクションもあり、世界レベルだといえる」と胸を張る。

 金さんのもう一つの“顔”、それは映像ジャーナリストだ。日本電波ニュース社の中国事務副代表を務め、過去、NHKやテレビ朝日など各局の報道番組の取材コーディネートを手がけた。2001年にはドキュメンタリー作品『祖父と僕の宝山』を監督、東京ビデオフェスティバルでシルバー賞を受賞するなど、実に多才だ。「1人数役というのは日本では『一貫性がない』とされる傾向にある。ただ僕の中では、中国だから日本だからということもないし、むしろ報道活動も格闘技も自分の中では相乗効果です」。日本語、英語、中国語、上海語、広東語が堪能な彼の、繊細かつ強靭な精神がうかがえる。

 ジムを案内してもらった。壁にはいたるところに絵や写真が飾られていて、男臭さというより全体的に透明感のある雰囲気さえ醸し出している。リングやサンドバックのほか、ランニングマシーン、エアロバイク、サウナに男女専用シャワールームなどが併設されている。上のフロアへ登ると、数メートルおきに天窓がうがたれ、淡いオレンジ色と水色の壁はところどころ細工が施されることにより柔らかな光が差し込む仕組みになっている。

 キックボクシング、ボクシングの他にも、テコンドー、ヨガ、エアロビクスに対応しており、女性の需要も満たしている。「スパーリングには強くかっこいい男性を用意していますから!」と、常に冗談を交えながらの対話は楽しい。

 「肉体作りや選手育成や勝ち負けということも大切だが、精神面の強化が重要で、これさえクリアできれば、他の何をやっても乗りこえられる」と語る金さんはまさに、「気はやさしくて力持ち」である。●



金暁慶 JIN XIAO QING
ジン・シャオチン
1966年上海市生まれ。中学の頃から武術に親しむ。ホテル専門学校を卒業後、ヒルトン上海に勤務。その後日本へ渡り、日本映画専修学校映像科、日本大学芸術学部放送学科を卒業。同時にキックボクシングを学ぶ。現在は『上海龍城武道健身中心』総経理と、日本電波ニュース社報道部中国事務副代表を務める。

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