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キダム

売春の合法化論争

売春合法化論議の始まり

 売春合法化の本格化論議が始まったのは、今年に公開された2人の提議による。今年1月、東方ネットにおいて周瑞金の1編の論文が掲載された。タイトルは『両会不妨議議地下性産業(両会でも地下性ビジネスについて語ってみたら?)』というもの。

 同様の提議は蕭瀚、潘綏銘、李銀河などの学者が売春の「合法化」、若しくは「非犯罪化」を訴えてきていたが、この周氏、実は『解放日報』評論部の副編集長や『人民日報』の副編集長を歴任し、1991年「皇甫平」と言うペンネームで『中国第2次思想解放的先声』という論文を発表。大きな反響を呼んだ、生粋の政治ジャーナリストだったからであった。

 この中で周瑞金氏は、海外に見られる「紅灯区(風俗街)」に習い、現在地下に潜っている非合法行為を、地上に戻して合法化し、その営業に一定の範囲を規定し、厳格な管理を施行。これが性病を途絶する、と論じている。また性産業に携わるものの社会的権利保護も同時に展開すべきと述べる。


遅夙生女史の「売春合法化提議」

 そして3月、中国の人民代表者会議が行われたが、その中で議論を呼んだのは黒龍江省の人民代表である遅夙生女史が提出した「売春合法化法案」だった。遅夙生女史の提議は性産業に関わる者の健康診断を義務化することによって、エイズを含む性病を防止。元来非合法であった売春を「合法化」すると言うもの。この遅女史は20年以上の間、弁護士としての経験を積んできた。彼女はそんな中で売春を行った女性が脅迫、ゆすりなどの被害に遭ったり、中には「口封じ」のために殺害された例もあったという。「売春の組織的行為が死刑になると定められており、しかも当局が幾度となく取り締まりを強化しているにも関わらず、その数が減るどころか、ますます激しくなっているのはなぜか」と言う疑念を感じていたという。また売春がエイズを含む性病を拡散させている、「その事実を我々は真正面から見つめなければならない」と話す。

 彼女の提議は先の周氏の意見をさらに具体的な法律修正にまで昇華させたもの。刑法358条のうち「売春行為の強制」に関する内容はそのままに、従来の売春行為の全面的禁止の条項を削除。第359条の「売春の斡旋」などを禁じる条項も、「“未許可の”斡旋の禁止」と修正すること。そして新たに第360条「健康証を得ないままの営業、指定された場所以外での営業」に対する罰則を組み込むことなどが盛り込まれている。

SARSの経験を応用

 現在、社会の中には「売春婦がエイズになるのは当然の報い」といった考えが存在している。しかし、彼女たちにも配偶者(恋人など)がおり、また子どもも生まれる。なにより彼女たち自身、自分たちがすでに感染していることを知らないことが多い。「彼女たちに定期診断を受けさせ、そして病気に感染していた場合、すぐに治療させることができる。これはエイズの拡散防止に一定の効果を上げるはず」。

 さらに遅女史は、合法化でSARSでの経験をエイズ防止に役立てることができる、と説明する。SARS時には非常に科学的な方法で、感染者が「何時」「どこで」「誰と」接触したかを明らかにすることで、有効的な隔離・治療という措置が取ることができた。この方法は売春を経路とするエイズ拡散防止にも、転用できるはずと遅女史は信じている。

 しかし、この提議には多くの批判をこうむる結果となった。彼女に対する批判には、「道義的(人権)」や「思想的」な内容が見られる。


共産主義的立場からも批判

 道徳的批判とは「社会の公的秩序や良質な風俗を乱し、社会の主流道徳を腐食せしめる」といったもののほかに、「逆に性病の蔓延を引き起し、国民の健康の大きな障害となる」というものや「正常な婚姻家庭を破壊し、多くの犯罪を引き起す」と言った懸念。また青少年の性に対する衝動を助長し、悪影響を与える恐れがあるのではないか、といった声だ。  
 
 一方、思想的な内容というのは次のようなものだ。中華民国時代、上海などの大都市には妓楼があり、売春は半ば合法化されていた。しかし、1949年5月に共産党により上海が解放されると、売春婦たちは「階級姐妹」と呼ばれ、「老板(妓楼の主人)」の圧迫を受ける階級と位置づけられたことで、政府の保護を受け、その自由を手に入れた。上海市長・陳毅が朝鮮戦争時に、朝鮮に送る軍事物資の中のアスピリンを「階級姐妹」たちの性病治療のために供出したこともよく知られている。

 今回の遅女史による「売春の合法化」は、上海解放時に救われた階級姐妹たちを、再び「階級」の中に閉じ込めようとするものであるというものである、と共産主義的思想から遅女史の提議を批判している。


李銀河の「売春非犯罪化」論

 中国社会科学院の性文化専門家である李銀河女史は、この論争について「売春非犯罪化」という理論を提示している。

 まず李女史は、売春の合法化によって、それが社会に及ぼす問題の解決になると肯定はしてはいるものの、「合法化」そのものには「賛成できない」と語り、売春問題を道徳問題として見、「非犯罪化」することを説く。つまり金銭の授受を行う行わないに関わらず、成人同志の性交易を犯罪として取り締まることはしない。しかし代わりに道徳面から譴責を与えること、というのが所謂「売春の非犯罪化」という論法である。

 李女史は非合法化することは決して根本的な解決に至ることは無く、ただ地下にもぐりこむだけ。ただ単純に取り締まるだけでは、黒社会(マフィア)の介入や、(罪を逃れようとする者の賄賂など)警察の腐敗を引き起すことになりかねない。この売春問題は、感情に任せて闇雲に取り締まることより、冷静に討論を重ねることこそ肝要と李女史は説明している。

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